ある日突然、ジャケットに袖を通すのが難しくなったり、ブラシで髪を梳かすことができなくなった経験はありますか?
突然起こる肩の障害は四十肩あるいは五十肩と呼ばれています。
四十肩や五十肩は「ちょっと肩周りの筋を違えた」などとは全く異なる状態です。
目次
四十肩ってどんなもの?
四十肩(しじゅうかた、英: Frozen shoulder)とは、肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)とも呼ばれ、肩の運動が制限される症状を示す言葉です。
一般的に、40歳以上から高齢者にかけてよく起こる症状とされていますが、年齢にかかわらず発症することもあります。
一般的に男性よりも女性の方が四十肩や五十肩なりやすい傾向にあります。
これは、後述する『四十肩になる原因』に血流や関節代謝が影響しているためと考えられます。
四十肩の主な特徴は?
痛み
四十肩の初期の段階では、肩に痛みを感じることがあります。
この痛みは徐々に悪化して、特に夜間や肩を動かす際に強くなることがあります。
発生から3ヶ月から5ヶ月程度はこの痛みが強く出る傾向にあります。
運動制限
肩関節の周囲に炎症が生じるため、肩周囲の運動が制限されます。
肩を上げたり後ろに引いたりすることが難しくなります。
特に結帯と呼ばれるエプロンの紐を後ろで結ぶような動作と結髪と呼ばれるポニーテール(髪型)をまとめるような動作が難しくなります。
四十肩の場合は肩関節の動きが完全に制限されるため、無理に動かそうとすると悪化する恐れがあります。
機能障害
四十肩によって肩の機能が大幅に低下して日常生活に支障をきたすことがあります。
例えば、髪を洗う、服を着替える、物を取るなどの動作が困難になることがあります。
前述の痛みや運動制限による機能障害が主ですが、痛みの強い時期が終わった後に適切な処置やリハビリを行わないと機能障害が残る場合があります。
四十肩になる原因は?
四十肩の原因はまだ完全には解明されていません。
主に以下のような要因が関与していると考えられています。
組織の異常
肩関節周囲の筋肉や靭帯や関節包などの組織に炎症や瘢痕が生じている場合があります。
肩は非常に柔軟性があり関節の自由度が高い部位です。
そのため、運動学的に誤った使い方をすると筋肉や靭帯を痛めやすい部位でもあります。
投球のしすぎや投球フォームに問題があって発生する野球肩などが有名ですね。
肩関節周囲の組織に慢性的な炎症が起きていたり、組織の一部が傷ついて瘢痕化していると四十肩や五十肩の原因の一つになります。
血行障害
血流の低下が四十肩の発症に関与する可能性があります。
血流が低下すると肩関節周囲の組織は萎縮していきます。
組織が萎縮していくと関節も狭小していきます。
道路に例えると、片方二車線あった交差点が道幅が狭くなって片側一車線になり、そのせいで渋滞が発生するようなイメージです。
血流の低下は加齢、運動不足、筋肉量の現象、喫煙や飲酒などの要因によって低下します。
冷え性の女性に四十肩や五十肩が多いのはこのような背景があると考えられます。
神経因性
神経因性疼痛が関与しているという説もあります。
肩関節周囲は頚椎から出る頚神経によって支配されています。
第三頚椎から第七頚椎までの下部頚椎は肩関節周囲の筋肉を管理しています。
また、肩関節の中を通ったり関節周りを迂回して腕や指先まで神経が伸びています。
この神経のコンディションや神経伝達に問題があると四十肩や五十肩が発生する可能性があると考えられています。
代謝異常
糖尿病や甲状腺疾患などの代謝異常が四十肩のリスク因子とされることがあります。
代謝異常は先述の血行障害や神経陰性因子の問題を引き起こします。
全身の代謝に影響する持病をお持ちの方はそうでない方に比べると四十肩や五十肩のリスクが上がるかもしれません。
四十肩をよくするには?
症状の重症度や患者の状況に応じて異なりますが、四十肩のケアには以下のような内容が考えられます。
保存的療法
肩関節周囲の物理療法やストレッチを行う。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の使用なども含まれます。
病院で行うリハビリなどがここに分類されます。
注射療法
ステロイド注射や関節内注射が行われる場合があります。
特に症状が強い急性期に対処的に行われることがあります。
外科手術
上記の保存的療法や注射療法が効果的でない場合には、手術が検討されることがあります。
手術が必要なケースは少数ですが、何度も繰り返して四十肩や五十肩を再発していたり
不完全な状態なのに無理に使うことで腱や靭帯を損傷してしまった場合は手術することもあります。
四十肩はどれくらいでよくなるの?
四十肩や五十肩が本当によくなるまでにはかなりの時間がかかります。
完全に回復するまでに、長い方だと2年近くかかることがあります。
平均的な回復期間はおよそ11ヶ月程度だと言われています。
もちろんこれは四十肩や五十肩の状態や程度、その人の生活習慣や負荷の軽重によって変わります。
四十肩や五十肩の回復のために悪化要因を避けて安静を保てる方ならば早くよくなるでしょうし、仕事や家事育児の関係で悪化するリスクを避けることができない人はどうしても長くかかります。
筋肉や靭帯が損傷されている場合、適切な施術やリハビリを行なっても最初の1〜2ヶ月は目立った変化が出ないことも少なくありません。
しかし、ある一定の段階まで回復すると日常生活の自由度が一気に取り戻されるのも四十肩や五十肩の特徴です。
四十肩や五十肩の施術は長期戦になります。
「なぜ長期間かかるのか」
「どのようなことをしてはいけないのか」
「どのタイミングでどのリハビリをすればいいのか」
など、四十肩や五十肩についての知識がないと不安になってしまいますね。
四十肩・五十肩のまとめ
最後に、四十肩や五十肩について簡単にまとめます。
四十肩が全然よくならない……と心配になっている方はご参照ください。
なぜ長時間かかるの?
四十肩や五十肩は単なる機能的な障害ではなく、肩周りの靭帯や筋肉が劣化していたり、肩関節の代謝異常などの要因が関わる問題です。
そのため、靭帯や筋肉が再生して関節内の代謝が正常化するまでに期間が長くかかります。
よくなるまでに半年から二年近くかかることが多いのはこのためです。
やってはいけないことは?
痛みが出る動きを繰り返すと体が防衛反応を起こしてますます症状が強くなります。
特に夜間痛と言って、夜中の痛みが強く出ている時期は何よりも痛みが出る動きを避けてください。
痛みがあっても動かした方が早くよくなる!というのも間違いではありませんが、その取り組みは一番症状が強い時期が終わった後に行った方が安全です。
どのタイミングでリハビリをするの?
夜間痛が落ち着いてきて、角度で言うと90度前後までどうにか肩を動かせるようになったなら積極的に運動させても大丈夫でしょう。
もっと早い段階から運動させた方がいいという考えもありますし、その考え方も一理あると思います。
ですが、経験則から申し上げると、痛みが強い段階や制限が大きい段階で無理に運動させると悪化のリスクが少なからずあります。
何より痛みが本当に辛いので、リハビリや運動が続かなくなります。
だんだん動かすことに恐怖心が植え付けられてしまうのも問題と言えるでしょう。
痛みが辛く動かすことが怖くなると、リハビリや運動が必要な段階になっても動かすことをせず、結果的に機能障害がずっと残ってしまうことがあります。
安静と痛みの回避を第一に、まずはある程度動くところまでは無理をしないというのが当院の四十肩と五十肩への考え方です。
ですので、最初期の四十肩・五十肩の整体施術は「肩や腕をほとんど動かさない施術」を行います。
もし四十肩・五十肩でお困りでしたら是非一度ご相談ください。
なるべく早くリハビリや運動療法に移行できるよう、お手伝いいたします。