首の痛みや肩こりとアゴの関係

顎(あご)の緊張で肩がこる?

咬筋や側頭筋など、顎(あご)周辺やこめかみ周辺の筋肉の問題で肩こりや首の痛みが発生すると言われています。

これらの筋肉は主に食べ物を噛んで食べるための役割を持ちます。

同時に、心理的なストレスに強く反応したり、口呼吸などの習慣でも影響を受ける筋肉です。

そのメカニズムは顎周辺の関節バランスが狂っていたり筋肉の慢性的な緊張や過剰な脱力があると、首の上の方から出ている顔周辺の神経を介して首の痛みや肩こりといった自覚症状が発生するためと考えられています。

また、咬筋や側頭筋は僧帽筋と呼ばれる筋肉と拮抗関係にあると言われています。

僧帽筋とは肩こりや首肩背中の痛みの直接的な原因のひとつとされる筋肉です。

首から背中にかけて菱形に広がるこの僧帽筋と顎周りの筋肉は相互関係性を持っていて、顎周りの筋肉が過剰に緊張すれば僧帽筋も同様に過剰に緊張し、逆に顎周りの筋力バランスが狂うと首肩背中の筋肉にもアンバランスが生じるとされています。

このような理由で、顎や顎周りの問題が肩こりや首の痛みの源泉になることがあります。

試しに、わざと奥歯を食いしばって口周りに力を入れてみてください。

自然と肩に力が入り、首にまで緊張が伝わるのを感じられると思います。

この連動性が無意識に働いて、慢性的な肩首の痛みや肩こりを生み出しているという考え方です。

顎の問題には奥歯の食いしばりや口の解放(口をポカーンと開けた状態)などが原因で両側の顎に均等に負荷がかかるタイプのもの以外にも、片側での咀嚼や頬杖などが影響する片側の顎に負荷が集中するタイプのものがあります。

顎(あご)と頚椎のバランス

顎のアラインメントや咀嚼の筋力バランスが悪くなると顔のバランスが崩れてきます。

ひどくなると片側の口角が上がったり、片側の眉が下がったりなど見て分かるレベルで狂ってきます。

顎は、上部頚椎と呼ばれる首の骨の上の方のエリアを運動時の支点にしています。

首の上の方を支点にして人間は顎を動かすので、顎のバランスに問題があれば支点となる頚椎にもアンバランスが発生して、だんだんと頚椎の左右バランスがおかしくなってきます。

人間の体はより上位のアンバランスを下位で補正する傾向にありますので、首から下に問題が波及しやすくなります。

これはどういうことかというと、顎や首にアンバランスがある場合、腰や股関節などでそのアンバランスを補正するための別の歪みやズレが生まれるということです。

顎は脳に近く食事や呼吸や発語など生理的に重要な動作に大きく関わっているため、顎の歪みやアンバランスがあるとほぼ全身にその影響が出ると言っていいと思います。

物理的なアンバランスだけでなく、顎と歯を介して首と顔の神経にも刺激が入るため、自律神経にも大きく影響します。

歯医者さんで抜歯や矯正をしない限り首の痛みや肩こりがよくならないというほどひどいケースは滅多にありませんが、歯科治療中だったり、気づかないうちに虫歯が進行していたりして、それが原因で首の痛みや肩こりがなかなか良くならなかったりまたは悪化していくケースはよくあります。

このように、首と顎(および歯)は非常に密接な関係があり、どちらかに大きな問題があると影響を及ぼします。

首のコンディションが悪いせいで歯痛が起こることもあります。

歯に痛みがあったので歯医者さんに行ったけど特に異常はなく、知覚過敏では?などと言われて処置を行ってもなかなかよくならない場合は首周りの問題を疑ってもいいかもしれません。

口呼吸や噛み締めの原因は?

こうした顎の歪みやズレ、アンバランスの原因になる口呼吸や噛み締めはどうして起こるのでしょうか。

単純に悪いクセや習慣である場合もありますが、『代償』という仕組みによって発生している場合が多いように感じます。

代償とは、何かを補うために別の何かが働くという意味です。

口呼吸や噛み締めは心理的なストレスの代償であったり、生活習慣から来る内臓機能の低下の代償であることが多く見られます。

慢性的な鼻炎があったり、この時期で言うと花粉症がひどくなって口呼吸になってしまい、悪循環が始まるケースもあります。

ただし、病気や怪我ではない機能的な体の問題は『何が悪い』と一元的に考えるよりも、全体バランスを包括的に見て考えることがすごく大事ですから『口呼吸や噛み締めがあるせいで顎が歪む』という短絡的な見方は気をつけたほうがいいでしょう。

慢性的な体の問題がなかなかよくならないので掘り下げて行ったら耳鼻科や歯科医領域の問題が見つかった、ということは少なからずあります。

親知らずを抜歯したことで頭痛やめまいが消えたり、慢性副鼻腔炎が良くなったことで肩首の問題や頭痛の問題が一気に楽になったりと、体の問題は一部ではなく全身に関連しています。

今回は顎というテーマでコラムを書きました。

顎そのものに痛みや不快感が出るケースはさほど多くありませんが、顔の歪みや体の歪みに顎が大きく関わっているケースはよく見受けられます。

痛みや辛さがなくても「なんか最近顔が変なんだよな……」と感じたら一度ご相談ください。

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