今でこそ短い時間の整体施術で必要な効果を出せるようになりましたが、かつては長時間に及ぶ施術を実践していた時期があります。
今回のコラムでは長時間施術のデメリットについて自身の経験とその反省という視点でお伝えしていきます。
リラクゼーション目的なら長時間施術でも全然OK
整体施術の目的がリラクゼーションやリラックスならば長時間施術でも特に問題がありません。
もちろん120分だとか180分は流石に長すぎると思いますが、60分程度ならばそれほどデメリットもないと思います。
リラクゼーションやリラックスが目的ということは、要は精神的な緊張やストレスを緩和しガス抜きをすることが目的ということです。
なので全身を触られたりマッサージされたりしながら脱力した状態で小一時間横たわっていることは非常に効果的です。
筋肉や骨格のバランス回復が目的の場合は長時間施術はNG
リラクゼーションやリラックスが目的ではなく、何度も繰り返す肩こり・腰痛・頭痛を根本的に良くすることが目的ならば話は変わってきます。
例として、整体の目的が筋肉と骨格のバランス回復であるとしましょう。
筋肉に起こる問題は集約すると
- 上手く縮むことができない
- 十分に伸びることができない
この二つです。
リラクゼーションやリラックスでよく言われるような
- 固くなっている
- こっている
というのは、実は機能的な問題ではありません。
これらは問題が起きた上での結果です。
つまり、筋肉に起きている問題を解消するためには
- 縮むことができない筋肉を縮めるようにする
- 伸びることができない筋肉を伸びるようにする
この二つの取り組みが重要です。
固くなった筋肉を柔らかくしたり、こっている筋肉を柔らかくすることはバランス回復には意味を成しません。
そもそも筋肉が固くなったりこったりする理由は、その部分が固くなったりこわばることで、アンバランスや機能障害をフォローしているからなのです。
筋肉の緊張には天然のギプスやサポーターのような役割があります。
筋肉は理由なく固くなったりこったりすることはありません。
ですので、固くなったりこったりした筋肉を長時間何度も揉んだり伸ばしたりすることは、慰安が目的でないならばナンセンスなのです。
無意味なだけならいいのですが、反復的な物理刺激は筋肉と筋膜を損傷します。
微細な損傷による筋力低下を起こし、刺激に反応して固くなったりこわばったりします。
ですので、筋肉の問題を解消するための整体を行うのならば、長時間に及ぶ施術は筋肉の理論上難しいのです。
極めて簡単に言えば、固さやコリを和らげようとした刺激で固さやコリが生まれるのです。
なかなかのマッチポンプですよね。
骨格に起こる問題を集約すると
- 可動性が低下している
- 可動性が高すぎて不安定になっている
この二つです。
関節が硬い、骨がズレているなどの表現はあくまでもイメージであり
動きが出なくなってしまった部分と動き過ぎてしまっている部分に二分されます。
つまり、骨格に起きている問題を解消するためには
- 動きが出なくなった関節を動くようにする
- 動き過ぎている関節を安定させる
この二つの取り組みが重要です。
全身の関節をバキバキしたり、とにかく全身を緩めて動くようにすることは逆効果です。
筋肉や骨格はパズルのような側面があります。
動き過ぎている関節を安定させてあげることで、動きの足りなかった関節が正しく動くようになることが多々あります。
一箇所修正したことで、そのほかの部分のアンバランスが消失したならばもうそれ以上やることはありません。
少ない手数で揃ったパズルを何度もいじくって、またゴチャゴチャした状態にさせてしまったことはありますか?
長時間の施術のデメリットはまさしくこれなのです。
過去の実体験と反省
ここからは私の過去の実体験とその反省を交えてお話しします。
これまで長々と長時間施術のデメリットについて書いてきましたが、最初から今のスタイルにたどり着いたわけではありません。
独立開業当初は60分程度の施術を行っていました。長時間施術ですね。
それからしばらくして90分くらいまで長引くようになります。超長時間施術ですね。
(ここまで長くなったのは、動作指導や生活習慣のカウンセリングなども行っていたからです)
単価も一人当たり12000円から20000円程度いただいていました。
そこから経験を積み、40分、30分、20分と短くなって、今に至ります。
最初に技術や知識を一から教えていただいた整体院では「どんなに長くても30分で仕上げるように」と教わっていました。
総院長はよく「昔は一人につき7、8分でやってた。30分もあればどんな問題でもみれるよ」とも仰ってました。
当時の私は生意気で、おまけにとにかく勉強不足だったので「30分で全身を見れるわけないだろ!」と思っていました。
もっと言葉を選ばずに言えば「ぶっちゃけ経営上の理由だろ!」とさえ思っていました。
ひとえに勉強不足のなせる愚かさなのですが、そこは若さ。
自分が正しいと信じて疑いませんでした。
長い時間やればその分だけ良くなると思っていたのです。
ですので、ヤトワレの制約がなくなったときはそれこそ思う存分長時間施術を行いました。
ノウハウやテクニックをフル活用して、最善の施術を行うことがベストだと思っていました。
なのに結果がついてこない。
長時間様々な技術で全身をみっちりやってるのに、良くなってないんですよね。
あのテクニックもこのスキルも使ってるのになんで? ハリなんて20本以上打ってるのに?
施術だけじゃダメなのか? そうだ運動指導と栄養指導も入れよう 心理療法も追加しよう……
となって今度は90分くらいかかる超長時間施術に至ります。
だけどやっぱり結果がついてこない。
めちゃくちゃ話も聞いてるし、体の使い方や食事の内容にまで介入しているのに、なぜ?
この当時本当に悩みました。
本当に色々なセミナーや勉強会に出て迷走していました。
今ならばハッキリと結果がついてこなかった理由がわかります。
結果が出なかった理由の一つは、適切な回数と頻度ではなかったことにあると思います。
超濃厚な施術でも頻度が月に1度くらいでは変化が出ません。
特に施術計画の最初のうちは、回数と頻度が非常に重要になります。
この点が結果が出なかった大きな理由の一つだと思います。
もう一つの理由は、長時間の刺激によって施術効果がほとんど相殺されてしまったことにあると思います。
長時間の刺激は満足度はとても高いです。「やられた〜!」という満足感があります。
ですが、体にとっては負荷が大きく、その反面施術の効果は高くありません。
大事なことなのでもう一度書きます。
長時間施術の施術効果は決して高くありません。施術に伴うダメージが大きいからです。
高頻度で施術をしていても、想定していたような結果が出なかった理由はこれだと思います。
統計データと人体生理と伝統代替療法の歴史を学び、ようやくこの現象が理解できるようになるまで10年以上かかりました。
「そんな短い時間で効くの?」というギモンはごもっとも
ですので、ときたま頂く「そんな短い時間で効くの?」という疑問は全くもってごもっともだと思います。
整体師本人でさえ10年以上「たくさんやればその分良くなる」と思っていたのですから。
その質問に対する答えは「短い時間でも効きます!」というよりは「長い時間だと結果が出づらい」が正確かなあと思います。
やられた直後は長時間施術は満足感があるのでいいのです。
ただ、数週間後数ヶ月後の結果は本当に出づらい。
整体を受けている人が疲れてしまうんですよ。
良くなるために行っているのに、ダメージを受けて帰ってくる。
それじゃじゃあ「月イチとか頻度を落とすかー」となると、人体生理上、筋肉や骨格の変化が出ない。
長時間施術には頻度を落としたことと釣り合うだけの効果がない。
むしろ下がる。
「そんな短い時間で効くの?」
と聞かれた時の答えは
「むしろ長いとダメなんです」
目的がリラクゼーションやリラックスでなく、根本原因の解消ならば。
まとめ
最後の方は昔話のようになってしまいました。
10年近く長時間施術にこだわっていた側の立場から、長時間施術のデメリットについてご紹介させていただきました。
この記事はリラクゼーションやリラックスを目的とした施術を否定するものではありません。
人体生理を理解した上で、ご利用者様の目的に合った整体選びをしていただければ幸いです。